経営戦略

ブルーオーシャン戦略とは?中小企業がニッチ市場で勝つ方法

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こんにちは、そうたろうです。
皆さんは「ブルーオーシャン戦略」という言葉を聞いたことがありますか?競争の激しい既存市場(レッドオーシャン)ではなく、まだ競争のない未開拓市場(ブルーオーシャン)を切り開こうという経営戦略のことです​。

大企業の戦略論と思われがちですが、実は中小企業こそニッチなブルーオーシャンを狙って勝負すべきだと私は思います。

本記事では、ブルーオーシャン戦略の基本概念から、中小企業がそれを活用してニッチ市場で勝つ方法までを解説します。難しい理論ではなく、身近な成功事例や具体的な進め方を交え、明日から実践できるヒントをお届けします。私自身、家業のガソリンスタンド経営で競争に勝つためにブルーオーシャン的な発想を取り入れており、その経験も踏まえてお話しします。

今ライバルとの価格競争に苦しんでいる経営者の方、新規ビジネスで差別化を図りたい起業家の方、ぜひ一緒に「競争のない市場」を見つけましょう!

ブルーオーシャン戦略の詳細な方法については、ブルーオーシャン戦略で成功した企業3選もご覧ください。

ブルーオーシャン戦略とは?

まずブルーオーシャン戦略の基本を押さえます。これはW・チャン・キム氏とレネ・モボルニュ氏によって提唱されたビジネス戦略論で、競争の激しい既存市場で戦うのではなく、未開拓の新しい市場を創造することを目指すものです​。

例えるなら、血で赤く染まった海(既存市場)でサメ同士がえさを奪い合うより、誰もいない青い海(新市場)を見つけて悠々と泳ごう、というイメージです。ブルーオーシャン戦略では価格競争から離れ、独自の価値を提供することに重点を置きます。​

これにより、新しい顧客層を獲得し、競争相手の少ない市場で高い利益を得ることが可能になるのです。

レッドオーシャンとの違い

対照的な概念としてレッドオーシャン戦略があります。既存市場でライバルとシェア争いをする従来型の戦略です。例えば、多くの中小企業が陥りがちな「近所の同業他社より1円でも安く売る」といった戦い方はレッドオーシャンです。これは消耗戦になりがちで、利益率も下がってしまいます。

一方ブルーオーシャン戦略では、「価格ではなくまったく別の価値で勝負する」ことを狙います。差別化と低コストの同時追求とも言われ、従来の常識を打ち破る発想が求められます​

例えば、高級路線か低価格路線か二者択一ではなく、「低価格だけどデザイン性が高い」みたいに両立させたり、業界の当たり前をやめて新機軸を生み出すようなアプローチです。

価値曲線(戦略キャンバス)というツール

ブルーオーシャン戦略を語る際によく出てくるのが価値曲線(バリューカーブ)です。これは自社と競合他社の提供価値をグラフ化したもので、縦軸に提供レベル、横軸に業界の主要な競争要因を取ります。これを描くことで、どの要因で競合と差別化できているか、逆に横並びかが一目でわかります。

価値曲線を使って、次の4つのアクションで戦略を考えます。

  • 排除(Eliminate): 業界で常識的に提供しているが顧客にとって価値の低い要因を思い切ってやめる。
  • 削減(Reduce): 過剰投資している要因を抑え、ほどほどにする。
  • 付加(Raise): 業界水準より大幅に高める要因を設定する。
  • 創出(Create): これまで業界になかった新しい価値要因を作り出す。

これをERRC(エルリック)グリッドとも呼びます。要するに、競合と同じ土俵で全部戦う必要はなく、捨てる所は捨て、独自に伸ばす所を決めようという発想です。

例えば後述する成功事例のサーカス「シルク・ドゥ・ソレイユ」は、従来サーカスの花形だった動物ショー(コストが高い)を排除し、芸術性やストーリー性を創出したことで、全く新しい市場を開拓しました。これこそブルーオーシャン戦略の好例とされています。

中小企業でも、この価値曲線を描いてみることで、自社が競合と差別化できるポイントが見えてきます。「ウチは他よりここが優れている」「逆にここは勝負しても勝てないから思い切って提供をやめよう」など戦略のヒントになります。

中小企業がブルーオーシャン戦略を活用する意義

ブルーオーシャン戦略というと大企業のマーケティング戦略のように思うかもしれませんが、実は中小企業こそ取り入れる価値があります。なぜなら、中小企業はリソースが限られる分、巨大企業と真っ向から戦うのは不利だからです。大企業が相手のレッドオーシャンでは、資本力や規模で勝る競合に勝ち続けるのは容易ではありません。

その点、ニッチな市場や隙間の需要で勝負するブルーオーシャン戦略なら、中小企業の強みを活かせます。具体的には

  • 柔軟性・スピード: 中小企業は社内稟議も少なく意思決定が速いです。ニッチなアイデアを素早く試せます。大企業が手を出さない細かい市場にも対応可能です。

  • 顧客との近さ: 現場の声を直接拾えるので、まだ顕在化していないニーズにも気づきやすいです。これを商品化できれば競争相手のいない需要を掘り起こせます。

  • 尖った技術・独自資源: 大手にはないユニークな技術やノウハウ、または個性的なスタッフなど、中小ならではの「キラリと光る資源」を軸に戦えます。他社が真似できない価値を提供すれば、価格競争に巻き込まれません。

  • 地域密着: 地域特有のニーズや商習慣を知り尽くしているのも強みです。その土地だけのブルーオーシャン(例:ご当地商品、市場の空白サービス)を作り出せます。

一言で言えば、中小企業はニッチでオンリーワンを目指しやすいということです。お客さん100万人に1人に刺さる商品を作れれば、それだけで数人規模の会社は成り立ちます。逆に万人受け狙いで大企業と同じことをしていたら厳しい。だからこそ、競争を避け独自路線を行くブルーオーシャン戦略は中小企業に最適なのです。

中小企業がブルーオーシャン戦略を取り入れる方法

それでは、具体的に中小企業がどうやってブルーオーシャンを切り開けばいいのか、ステップごとに考えてみましょう。。

市場調査とニッチ市場の特定

市場調査の重要性

市場調査は、ブルーオーシャン戦略の基盤となる重要なステップです。中小企業は、大企業が手を出していない市場や、消費者の未充足なニーズを見つけるために徹底的な市場調査を行う必要があります。

市場調査の方法

定性調査

インタビューやフォーカスグループを通じて、消費者の深層的なニーズや動機を探ります。特に、既存の製品やサービスに対する不満や改善点を洗い出すことが重要です。

定量調査

アンケート調査や市場データの分析を通じて、消費者の行動パターンや市場のトレンドを把握します。これにより、潜在的なニッチ市場を定量的に評価できます。

ニッチ市場の特定

市場調査を基に、競合が少ない市場や特定の消費者セグメントを特定します。例えば、高齢者向けのサービスや、特定の趣味を持つ消費者層など、独自のニーズを持つ市場が狙い目です。

差別化戦略の構築

差別化の重要性

ブルーオーシャン戦略において、差別化は極めて重要です。競合他社とは異なる製品やサービスを提供することで、独自の市場ポジションを確立することができます。

差別化の方法

製品の特徴

デザインや機能、品質において差別化を図ります。例えば、エコフレンドリーな製品や、特定の機能を強化した製品を提供することが考えられます。

サービスの質

顧客サポートやアフターサービスの質を向上させることで差別化を図ります。例えば、24時間サポートや、パーソナライズドなサービスを提供することが有効です。

ブランドイメージ

ブランドの独自性やストーリーを強調することで、消費者に対する強い印象を残すことができます。例えば、地元の素材を使用した製品や、特定の社会的価値を推進するブランドなどが挙げられます。

イノベーションの推進

イノベーションの重要性

技術革新やビジネスモデルの革新を通じて、他社が模倣できない優位性を築くことがブルーオーシャン戦略の核心です。イノベーションにより、持続的な競争優位を確保することができます。

イノベーションの具体的な方法

製品イノベーション

新しい技術や素材を使用して、既存の製品を改良したり、新製品を開発します。例えば、スマート技術を活用した家電製品や、ヘルスケア関連のウェアラブルデバイスなどが考えられます。

プロセスイノベーション

生産プロセスやサービス提供プロセスを効率化することで、コスト削減や品質向上を図ります。例えば、IoT技術を導入して製造プロセスを自動化することや、顧客対応のデジタル化などが有効です。

ビジネスモデルイノベーション

新しいビジネスモデルを導入することで、市場での優位性を確立します。例えば、サブスクリプションモデルを導入して定期的な収益を確保することや、プラットフォームビジネスを展開して複数のサービスを統合することが考えられます。

顧客との接点強化

顧客関係の重要性

中小企業にとって、顧客との強固な関係を築くことは、競争優位性を維持するために非常に重要です。特に大企業が提供できないパーソナライズドなサービスや、顧客との直接的なコミュニケーションは、大きな差別化要因となります。

顧客接点強化の方法

パーソナライズドサービス

顧客の個別のニーズや嗜好に対応するサービスを提供します。例えば、顧客の誕生日に特典を提供したり、過去の購入履歴に基づいた推薦サービスを行うことが考えられます。

コミュニティの構築

顧客とのコミュニケーションを促進するために、オンラインコミュニティやロイヤルティプログラムを構築します。これにより、顧客のエンゲージメントを高めることができます。

フィードバックの活用

顧客からのフィードバックを積極的に収集し、それを基に製品やサービスを改善します。顧客の声を反映することで、顧客満足度を向上させることができます。

ブルーオーシャン戦略の成功事例とポイント

成功事例1: iPodとiTunes(Apple)

Appleは、音楽プレーヤー市場でiPodを発売し、同時にiTunesという音楽配信サービスを提供することで、新しい市場を創造しました。当時、音楽プレーヤー市場は競争が激しかったですが、iPodとiTunesの組み合わせによって、ユーザーにシンプルで統合された音楽体験を提供し、大成功を収めました。この成功の要因は、製品とサービスの統合、シンプルなデザイン、そして使いやすさにありました。

成功事例2: ニトリ

日本の家具・インテリアチェーンであるニトリは、ブルーオーシャン戦略を活用して成功しました。ニトリは、価格競争の激しい家具市場で、「お値段以上の価値」を提供することを目指しました。製造から販売まで一貫して管理することでコストを抑え、高品質な製品を低価格で提供することに成功しました。この成功の要因は、垂直統合モデルとコストリーダーシップ戦略にあります。

成功事例3: ブルドックソース

ブルドックソースは、日本のソースメーカーであり、ブルーオーシャン戦略を用いて成功しました。彼らは、伝統的なソース市場から一歩踏み出し、独自の健康志向ソースを開発しました。この製品は、健康志向の消費者をターゲットにし、低カロリー、無添加、オーガニックといった特徴を持っています。この成功の要因は、健康志向という新しいニーズを捉えたことと、他社が提供していない独自の価値を提供したことにあります。

当社の事例:小規模セルフガソリンスタンド

最後に拙社(ガソリンスタンド業)の小さな取り組み例ですがご紹介します。ガソリンスタンド業界は価格競争のレッドオーシャンです。そこで当社では、セルフ式スタンドでありながら接客サービスを付加するという差別化を図っています​

具体的には、セルフ給油が難しい高齢者向けにスタッフ給油サービス(その分数円高く設定)を提供したり、+1000円で手洗い洗車後の拭き上げサービスをしたりしています​

またスタッフが常連客の顔と名前を覚えて積極的に声掛けするなど、大型無人店舗にはない人間味のある接点強化を行っています​

これにより、「セルフは安いけど不親切」という一般的な印象に対し、「多少高くても安心丁寧なセルフスタンド」という独自ポジションを狙っています。実際、ご高齢の方やスーツを汚したくないビジネスマン、主婦層など、一部のお客様には強く支持いただけています​

売上全体では大手チェーンに及びませんが、地域のニッチ需要をしっかり掴んで生き残る戦略として成果を感じています。

この例のポイントは、業界の常識だった「セルフ=無人安売り」を覆したことです。中小企業は、業界の当たり前にとらわれずこうした柔軟な発想でニッチを攻めることで、自分だけの海を見つけられると思います。

まとめ

ブルーオーシャン戦略は決して特殊な大企業の理論ではなく、中小企業が生き残り成長するための実践的な考え方です。競争の激しい市場から抜け出し、自社ならではの価値で新たな市場を作り出すことができれば、価格競争に悩む日々から解放されます。最後に要点を振り返ります。

  • ブルーオーシャン戦略とは
    競争のない新市場を創造する戦略​価格競争を避け、独自の価値提供で新規顧客を獲得する。

  • 中小企業こそ有効
    大企業と違い柔軟性や顧客密着がある中小は、ニッチ市場を狙いやすい。オンリーワンの強みを活かして差別化しやすい。

  • 実践ステップ
    市場の隙間ニーズを調査し、差別化戦略を構築。価値曲線で競合との差別化ポイントを明確にし、捨てる部分と磨く部分を決める。小さなイノベーションで独自価値を生み、顧客との関係を深めて市場を育てる。

  • 成功事例
    AppleのiPod+iTunes(製品とサービス統合)​、ニトリ(垂直統合で高品質低価格)​、ブルドックソース(健康志向ソース開発)​、そして当社ガソリンスタンドのような接客付加セルフなど、常識にとらわれない発想と独自価値が鍵。

  • 注意点: ブルーオーシャン戦略を取る際も、収益性は見失わないように。差別化と低コストの両立を目指し、ビジネスモデル全体を工夫する必要があります。

中小企業がニッチで勝つには、「他社がやらないこと」を勇気を持ってやってみることが大切です。最初は理解されなくても、そこに価値を感じるお客様は必ずいます。そのお客様の笑顔こそ、新市場が開けた証拠です。

ぜひ発想の転換で御社ならではの青い海を見つけてください。競争だらけの赤い海から一歩抜け出し、伸び伸びと商売を楽しみましょう!そのヒントとして本記事がお役に立てば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

次に読むべき記事: 『ブルーオーシャン戦略で成功した企業3選』(さらに具体的な成功事例を深掘りしていますので、併せてご覧ください)

【出典】
W・チャン・キム、レネ・モボルニュ『ブルー・オーシャン戦略』、2005年。
Philip Kotler, Kevin Lane Keller『マーケティング・マネジメント』、2015年
Walter Isaacson『スティーブ・ジョブズ』、2011年
『ニトリの経営戦略』、2019年。
『ブルドックソースの挑戦』、2020年

ABOUT ME
そうたろう
そうたろう
中小企業診断士×宅建士
損害保険会社で7年間勤務後、家業のガソリンスタンドへ転職。経営を学ぶべく中小企業診断士を取得し、「負けない」中小企業経営を目指して奮闘中。家庭では共働きの妻と、子2人の育児に奮闘中。
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