家業を継ぐか売却か?~後継者が判断すべきポイントと選択肢~

こんにちは、そうさんです。
今回は「家業を継ぐべきか、それとも売却すべきか」と迷う後継者の方向けに、判断のポイントと選択肢を整理してみます。
私自身、大学卒業後7年間サラリーマンをしていましたが、悩み抜いた結果、家業のガソリンスタンド会社に入社しました。家業を継ぐかどうか悩んだ経験があるので、同じ立場の方の気持ちは痛いほどわかります。
家業を継ぐ決断は人生の大きな転機です。一方で、事業を第三者に売却(M&A)することも、会社の存続や発展を考えると有力な選択肢になり得ます。継ぐか売るかの判断には、事業の将来性や自身の適性、家族の意向など様々な要素が絡みます。
本記事では、事業承継と事業売却それぞれのメリット・デメリットや判断基準をわかりやすく解説し、成功・失敗事例から学ぶポイントも紹介します。迷える後継者の方が納得のいく決断を下せる手助けになれば幸いです。
家業を継ぐか売却か~判断する前に考えるべきこと~
まず最初に強調したいのは、「継ぐ or 売る」の正解は人それぞれということです。家業への思い入れや事業の状況によって最適解は異なります。したがって、他人の意見に流されるのではなく自分と家族、会社の将来をじっくり見据えて考えることが大切です。
判断にあたって整理しておきたい観点は主に以下の4つです。
- 事業の将来性・市場性
家業の属する業界は今後成長が見込めるか、事業モデルに将来性はあるかを検討します。市場が縮小している、競争が激化している場合、継いでも苦労が多いかもしれません。一方、ユニークな強みがあり伸びそうな事業なら継ぐ価値大です。 - 自分自身の適性・覚悟
自分はその事業に情熱を持てるか、経営者になる覚悟と資質はあるかを自問しましょう。興味が持てない事業を無理に継いでも辛いだけです。逆に「自分ならもっと伸ばせる」と思えるなら挑戦のしがいがあります。 - 家族・現経営者の意向
親など現経営者が事業に強い思い入れを持っている場合、継がない選択には反対されるかもしれません。ただし最終的には自分の人生ですから、家族としっかり話し合って決めることが重要です。また親族が複数いる場合、継ぐ人と継がない人で不公平感が出ないよう配慮も必要です。 - 会社の経営状況・負債
会社の財務状態も考慮しましょう。大きな借金がある事業を引き継ぐのはリスクです。逆に純資産が多いなら継いだ後の投資余力になります。決算書を確認し、専門家にも相談して現状を把握することが大切です。
これらを踏まえた上で、「継ぐ」場合と「売却(第三者承継)」場合のメリット・デメリットをそれぞれ見ていきましょう。
家業を継ぐメリット・デメリット
継ぐメリット
- 会社の歴史や信用を引き継げる
長年培った顧客との信頼関係やブランドをそのまま活かせます。ゼロから起業するのと比べ、基盤がある状態でスタートできるのは大きな利点です。 - 家族の期待に応えられる
親から事業を受け継ぎ発展させることは、家族にとって誇りとなります。社員にとっても「先代の息子さんが継いでくれて安心した」というケースは多いです。 - 自分の裁量で経営できる一度継いでしまえば、自分のアイデアで事業を動かせます。改革や新規事業にも自由に挑戦でき、経営者としてのやりがいを味わえます。
- 事業売却益より将来のリターン
今売却すればまとまったお金が入るかもしれませんが、継いで事業を成長させれば、将来的に得られる利益や報酬はそれ以上になる可能性もあります。自分次第で会社の価値を高められる点は魅力です。
継ぐデメリット
- 重圧・プレッシャーが大きい
若い後継者にとって、従業員や家族の生活を背負うプレッシャーは計り知れません。「会社を潰したらどうしよう」という不安は常につきまといます。実際、「31歳で家業を継いだが想像を絶するプレッシャーに押し潰されそうになった」という声もあります。『ニッコーバン』の日廣薬品 公式note - 自分のやりたいこととの葛藤: 本当は他にやりたい仕事や夢があったのに、家業を継いだために諦めることになるケースも。特に昨今は「子どもに苦労させたくない」という親心から、子世代が継がない選択をすることも増えています。事業承継M&Aパートナーズ
- 先代との経営方針の違い: 継いだ後に、新社長と先代(前社長)の考え方が合わず衝突することがあります。事業承継では親子喧嘩が経営問題化する例も少なくありません。例えば先代が保守的で改革に否定的だと、後継者が改革案を出しても却下され続け業績低迷…という失敗例もあります。一般社団法人 中小企業支援ナビ
- 経営が上手くいかないリスク: 継いだからといって必ず成功する保証はありません。むしろ新社長の未熟さや経営環境の変化で業績悪化するリスクも。親世代とは異なる苦労が待っている可能性を覚悟する必要があります。
以上を踏まえると、家業を継ぐことは安定した土台を得られる反面、精神的負担や制約も大きいということですね。「会社を良くしたい」という強い意欲とビジョンがある場合に、継承のメリットがデメリットを上回ると言えそうです。
家業を売却(第三者承継)するメリット・デメリット
次に、事業を第三者に譲渡・売却する選択肢(M&A)について考えます。これは後継者が事業を継がない場合でも会社自体は存続させる方法です。
売却(M&A)のメリット
- 自分の人生を自由に選べる: 事業を売却すれば、後継者候補であるあなたは家業のしがらみから解放されます。別のキャリアに進むこともでき、自分のやりたい人生を追求できます。「親の会社を継がなかった」という罪悪感も、会社が存続すれば軽減されるでしょう。
- 会社と従業員を存続させられる
単純に廃業すると従業員は職を失いますが、M&Aで良い買い手が見つかれば雇用が維持される可能性が高いです。廃業では従業員が路頭に迷ってしまいますが、M&Aなら雇用を守る道が残されます。自分が継がなくとも会社を残せるのは大きなメリットです。 - 事業の発展に繋がる可能性
買い手企業の経営資源やノウハウと融合することで、家業がさらに成長する可能性があります。例えば同業他社に売却してグループ入りすれば、スケールメリットや商品の幅出しで事業拡大が期待できます。自分では成し得なかった飛躍を実現できるかもしれません。 - 創業者・オーナーに資金が入る
会社を売却すれば株式売却益としてまとまった資金が得られます。これは親である現経営者の老後資金や、後継者自身の新事業資金に充てることもできます。事業に未来がなく赤字が続くなら、価値が残っているうちに売って現金化するのは合理的な判断です。
売却(M&A)のデメリット
- 家業・ブランドを手放す寂しさ
何と言っても、先祖代々続けてきた事業を他人に譲るのは感情的な抵抗があります。親や親族が「なぜ他人に売るんだ」と嘆くケースも。長年の取引先からも驚かれたり、不安を抱かれるかもしれません。 - 買い手次第では会社の方向性が変わる
M&A後は新オーナーの方針で動きます。場合によっては社名変更やリストラ、拠点統合などが行われ、元の会社の姿が変わってしまう可能性もあります。これは特に従業員にとって不安材料です。 - 希望通りの条件で売れるとは限らない
中小企業のM&Aでは、希望価格で売れなかったり、買い手がなかなか見つからないこともあります。時間と手間をかけても結局成立せず廃業になってしまうケースもゼロではありません。市場における自社の評価を客観視する必要があります。 - 交渉・手続きの煩雑さ
M&Aを進めるには専門家(M&A仲介会社やアドバイザー)のサポートが不可欠ですが、それでも契約までのプロセスは複雑です。デューデリジェンス(買収監査)対応や契約条件の詰めなど、現経営者と一緒に取り組む必要があります。
「事業承継・M&A補助金」で当該費用の補助を受けられるため、別の記事で紹介予定です。
売却のメリット・デメリットを見てきましたが、ポイントは「会社を残せるか」「自分のやりたいことは何か」に尽きると思います。
特に事業継続が困難な場合、従業員や取引先のためにも早めに第三者承継を検討する価値は高いでしょう。
判断に迷った時のチェックポイント
継ぐか売るか、本当に迷いますよね。そこで、最終的な判断を助けるいくつかのチェックポイントを提示します。当てはまる項目が多い方に傾けて考えてみてください。
- 「家業に対する情熱」が強い → 継ぐ方向
「この事業を自分の代でこう変革したい」「家業を守りたい」という熱い思いがあるなら、苦労があっても継ぐ意義があります。逆に情熱が湧かないなら無理に継ぐべきではありません。 - 「現経営者や従業員の期待」が大きい → 継ぐ方向
社内外から「ぜひあなたに継いでほしい」という声が多い場合、背中を押してもらっているとも言えます。支えてくれる人がいるなら心強いですね。 - 「自分に経営が務まるか不安」が強い → 売却方向
経営者としての自信が全く持てず、勉強や準備をする気力も起きない場合、無理に継ぐのはリスクです。無理だと感じる直感も大切にしましょう。 - 「事業に将来性が感じられない」 → 売却方向
市場が先細りだったり、大企業との競争で勝ち目が薄い事業なら、継ぐモチベーションも上がりにくいはずです。だったら早めに売却して別の道を探るのも合理的です。 - 「他にやりたい夢がある」 → 売却方向
家業より情熱を注げることが別にあるなら、その夢を追う人生も素晴らしいですよね。会社は売却して、自分の夢に進む選択肢も大いにアリです。 - 「借金などマイナス要素が大きい」 → 売却方向
引き継ぐ負担(負債、不採算事業など)が大きすぎると、若い後継者には荷が重いです。その場合はむしろ買い手に引き取ってもらう方が傷が浅く済むこともあります。
いかがでしょうか?もちろん各家庭・各企業で事情は様々なので一概には言えませんが、「自分がやりたいか」「事業が伸びるか」という2点はやはり重要な判断軸になるでしょう。
事例:継いで成功したケース vs 売却して成功したケース
最後に、実際の事例から学んでみましょう。継ぐ・売るそれぞれの成功例と、残念ながら失敗に終わった例を紹介します。
継いで成功したケース
老舗メーカーA社では、社長の息子さんが30代で事業承継しました。彼は外資系企業での勤務経験を活かし、就任後すぐに社内にマーケティング手法を導入。新商品開発とブランディング戦略を強化した結果、従来からの取引先だけでなく新規顧客を多数開拓し、売上高を承継前よりも150%増加させました。
また若い感性でSNS発信にも力を入れたことで、採用面でも若手人材が集まりやすくなり組織が活性化。先代社長も「継がせてよかった」と太鼓判を押しています。成功要因は後継者の新しい知見と行動力、そして先代の寛容なサポートでしょう。
売却(第三者承継)して成功したケース
地方の建設会社B社は社長に後継者がいなかったため、信頼する社員へ継がせることも検討しましたが資金繰りが厳しく断念。そこで地元の同業他社に事業譲渡(M&A)しました。買収先の企業は最新のICT建設技術を持っており、B社の社員はその技術研修を受けて生産性が大幅向上。また買収先は人手不足だったのでB社社員の雇用も全員継続され、むしろ幹部候補として重用されたそうです。
B社の屋号は統合され消えましたが、社員や取引先は引き続き仕事を続けられ、社長も譲渡益で借金を清算し円満リタイアできました。このケースでは早めに優良な買い手とマッチングできたことが成功のポイントです。
継がず売らずで失敗したケース
小売業C社では、息子が家業を嫌い東京で就職。親は説得できず、かといって他に承継先も考えず放置していました。社長が高齢で体力の限界を迎え、ついに廃業を決断。しかしライバル店がすぐ近くに出店し始めていたため、本当はもっと早くM&Aしていれば高値で売れたと言われていました。
最終的に在庫処分セールで僅かな現金を得ただけで、従業員は離散。地域のお客様からも「残念だ」「もう少し続けてほしかった」と惜しまれました。この例は承継も売却も検討が遅れた結果、選択肢がなくなってしまった失敗例です。
まとめ:自分らしい決断を下すために
家業を継ぐか売却か—究極の選択ですが、大切なのは「自分が納得できる道」を選ぶことです。継ぐにせよ売るにせよ、一度決断したら前向きに行動を開始しましょう。
継ぐと決めたなら腹をくくって経営を学び、事業をより良くする努力を。売却すると決めたなら良いパートナーを探し、ベストな条件で譲渡できるよう準備を進めます。
迷ったときは、ぜひ信頼できる第三者の意見も聞いてみてください。専門の事業承継コンサルタントや中小企業診断士に相談すれば、客観的なアドバイスが得られます。
実は私も家業を継ぐか悩んだ際、先輩の診断士に相談し視野が広がった経験があります。
正解は一つではありません。あなた自身と会社にとってベストな選択を見つけることができるはずです。その決断ができた時点で、もう道は開けています。
最後までお読みいただきありがとうございました。